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2024.06.06  愛犬・愛猫が長引く下痢に苦しむ…|犬と猫の炎症性腸疾患について

犬や猫が下痢をする原因はさまざまですが、お腹を壊しやすい、下痢を繰り返す、軟便などの症状がみられる場合は「炎症性腸疾患」が考えられます。炎症性腸疾患は、特定の原因が分からないにも関わらず下痢が長く続くことが特徴です。

動物病院で処方された薬を飲んでも下痢が治らない場合は、適切な診断を受けることが大切です。

今回は犬と猫の炎症性腸疾患について、原因や治療方法、対処法についてなどを詳しくご紹介します。

■目次
1.原因
2.診断方法
3.治療方法
4.対処法や予防策
5.まとめ

原因

炎症性腸疾患のはっきりとした原因はまだ解明されていませんが、遺伝的要因や免疫学的反応、腸内細菌叢の変化などが影響していると考えられています。

これらの原因が腸の粘膜に炎症細胞を集め、炎症を引き起こすことで、下痢や嘔吐といった消化器系の症状が現れます。

診断方法

炎症性腸疾患は、激しい症状が現れない場合も多いため、診断が困難とされています。
また、診断をするまでにはさまざまな検査をする必要性があり、原因を特定するまでに時間がかかることがあります。

診断は、まず身体検査や血液検査、糞便検査、超音波検査やX線検査による画像検査を行います。これらの検査で原因が解明されない場合、「慢性腸症」と診断され、さらに詳細な検査が必要となります。

慢性腸症は、炎症性腸疾患の他にも、食事反応性腸症、治療抵抗性腸症、抗菌薬反応性腸症、といった異なるタイプがありますが、最初に、食事療法や抗菌薬療法を試して症状の改善を図ります。
これらの治療で症状が改善しない場合は、さらに内視鏡検査や開腹による生検が行われます。これにより消化管の粘膜の一部から組織サンプルを採取し、顕微鏡でどのような細胞がいるのかを調べます。

組織内に炎症細胞が確認されれば、免疫抑制療法を試みます。この治療が効果を示せば、炎症性腸疾患との診断が確定します。このように段階を追って適切な治療方法を探ることで、症状の管理と改善を目指します。

治療方法

炎症性腸疾患の治療には、ステロイド剤と免疫抑制剤の内服を中心に行います。それに加えて、抗生物質の投与や、消化が良い低脂肪食へ切り替える食事療法も併用されることがあります。

治療を行う過程で、一時的に薬の使用を休止できることもあります。場合によっては食事療法だけで症状をコントロールできることもありますが、薬を休止した後に病気が再発することがあるため、長期にわたって注意が必要です。

対処法や予防策

はっきりとした原因はわからないため、炎症性腸疾患の予防は困難とされています。
消化器症状は犬や猫に多くみられるため、症状を発症してから、しばらく様子をみてしまいがちですが、愛犬や愛猫の下痢が3週間以上続く場合は、炎症性腸疾患の可能性が考えられます
そのため、早めに動物病院に受診することをお勧めします。

まとめ

下痢を引き起こす病気は多岐にわたるため、適切な検査や正確な診断が行われないことで、誤った薬を漫然と使用してしまうリスクがあります。特に下痢が長く続く場合は、慎重に原因を特定し、適切に治療を進める必要があります。

炎症性腸疾患はさまざまな検査を行うため、診断までに時間がかかってしまうことが多いです。愛犬や愛猫が長期間にわたって下痢に苦しまないためにも、早期発見、早期治療が大切です。

 

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