2025.07.02 犬のドライアイ(乾性角結膜炎)とは|症状・原因・治療法を解説
「最近、愛犬の目がしょぼしょぼしている」「目やにが増えた気がする」と感じたことはありませんか?こうした異変が見られた場合、「ドライアイ(乾性角結膜炎)」のサインかもしれません。
犬も人と同じように「目が乾く」ことがあります。ただし、人間のように自覚して対処することができないため、不快感を言葉で伝えられない犬では、飼い主様が異変に気づいたときには、すでに症状が進行していることも少なくありません。さらに放っておくと深刻な状態になることもあるため、早期発見・早期治療が大切です。
今回は犬のドライアイ(乾性角結膜炎)について、症状や原因、治療方法などを解説します。
■目次
1.犬のドライアイとは?
2.症状
3.原因
4.診断方法
5.治療方法・ケア方法
6.稲川動物病院における眼科診療の特徴
7.まとめ
犬のドライアイとは?
犬のドライアイは、正式には「乾性角結膜炎」と呼ばれる病気で、目の表面を保護する涙の分泌量が不足することで発症します。涙が十分に分泌されないと、角膜や結膜が乾燥し、炎症を起こしやすくなります。
このような状態を放置すると、深刻なトラブルにつながる可能性があるため、注意が必要です。
症状
ドライアイの初期症状はわかりにくく、見過ごされがちです。そのため、以下のような症状に気をつけましょう。
・目を細める、しょぼしょぼさせる
・目をこする
・白目の部分(結膜)が赤くなる
・目やにが増える
・白っぽい、または黄色っぽい粘り気のある目やにが出る
さらに症状が進行すると、角膜が乾いて傷がつきやすくなり、感染症を併発するリスクが高まります。さらに重症化すると、角膜に黒い色素沈着が生じ、視力に影響が出る可能性もあります。
最悪の場合、失明につながることもあるため、少しでも気になる症状が見られたら、できるだけ早めに動物病院を受診することが大切です。
原因
ドライアイを引き起こす原因としては、以下が考えられます。
・慢性眼瞼結膜炎:まぶたの裏側にある結膜が慢性的に炎症を起こし、涙の分泌に影響を与えます。
・ウイルス感染:ジステンパーなどのウイルスによって涙腺の働きが低下し、涙の量が減ることがあります。
・顔面神経の障害:顔面神経の麻痺により、まばたきの機能が低下すると、涙が目全体に均一に行き渡らず、乾燥しやすくなります。
・内分泌の異常:甲状腺機能低下症や糖尿病、クッシング症候群などによりホルモンのバランスが崩れると、涙腺の働きや涙の質が変わり、十分な涙膜が保てなくなります。
・加齢:年齢を重ねることで、涙の分泌量が自然と減少します。
・外傷の後遺症:目の外傷により涙腺が傷つくと、涙をつくる機能が低下して目が乾燥します。
これらの原因が複数重なることも多いため、日頃から目の状態に気を配り、小さな異変にも早く気づけるようにしておくことが大切です。
また、以下のような犬種はもともとドライアイを発症しやすい傾向があるため、特に注意して様子を見てあげましょう。
・シーズー
・パグ
・チワワ
・キャバリア・キングチャールズ・スパニエル
・イングリッシュ・ブルドッグ
・ウェストハイランド・ホワイトテリア
・アメリカン・コッカー・スパニエル
診断方法
ドライアイの診断には、動物病院での検査が欠かせません。以下のような検査を組み合わせることで、正確に目の状態を把握し、適切な治療につなげます。
<シルマーティアテスト>
専用の細い試験紙をまぶたに挟み、1分間でどれだけ涙が染み込むかを測定する検査です。涙の量が少ない場合、ドライアイが疑われます。
<フルオロセイン染色試験>
フルオロセインという安全な染料を目に入れて、角膜に傷がないかを確認する検査です。傷がある部分は染料が染み込み、黄緑色に浮かび上がるため、損傷の有無や程度がわかります。
<スリットランプ検査(眼科用顕微鏡検査)>
スリットランプ顕微鏡という専用の装置を使って、目の表面を拡大しながら観察する検査です。角膜や結膜、涙の状態などを立体的かつ詳細に確認することができます。
当院ではこれらの検査を通じて、愛犬にとって最適な治療方法をご提案しています。気になる症状がある場合は、お気軽にご相談ください。
治療方法・ケア方法
ドライアイの治療は、原因や症状の程度に応じて異なりますが、一般的には以下のような方法が用いられます。
・涙促進薬:涙の分泌を人工的に促す目薬で、根本的な改善を目指します。
・点眼薬:角膜や結膜の乾燥を防ぎ、目の表面を保護します。
症状が重度の場合には、外科的な処置が検討されることもあります。ただし、これはあくまで最終手段であり、多くの場合は点眼薬などの薬物治療によって症状をうまくコントロールできることが多いです。
また、点眼はご自宅で続けていく必要があるため、以下に正しい点眼の方法をご紹介します。
<点眼の方法>
①準備を整える
点眼薬とごほうび(おやつなど)を用意しておきます。犬がリラックスできる静かな場所で行いましょう。
②犬の頭をやさしく固定する
犬の後ろ側に回るか、横から片手で顎の下をなでるようにやさしく支えて少し上を向かせ固定します。正面から構えると怖がることがあるため、犬にとって見えにくい位置から行うのがポイントです。
③まぶたをやさしく開く
もう一方の手で、目の上または下のまぶたを軽く開きます。力を入れすぎず、そっと支えるようにしましょう。
④点眼薬を垂らす
点眼薬の先が目やまつ毛に触れないよう注意しながら、目の表面に1滴垂らします。
⑤まばたきをさせる
点眼後は、まぶたをそっと閉じさせて薬が目全体に行き渡るようにするか、犬が自然にまばたきするのを待ちます。
⑥褒める・ごほうびを与える
点眼が終わったらすぐに声をかけて褒め、おやつなどのごほうびを与えましょう。これを繰り返すことで、点眼への苦手意識が少しずつ和らいでいきます。
また、無理に抑えつけようとすると、犬が点眼を嫌がるようになってしまうため、優しく落ち着いて行うことが大切です。毎日行う場合は、短時間で終わらせるように意識しましょう。
稲川動物病院における眼科診療の特徴
当院では、一般診療における目の診察だけでなく、より専門的な対応ができるよう、月に2回(木曜日または金曜日)眼科専門医による診療日を設けています。慢性的な目のトラブルや治療が長引いている症状など、より詳しい検査や処置が必要な場合にも対応できる体制を整えています。
また診察では、飼い主様との丁寧なコミュニケーションを大切にし、犬がストレスを感じにくいような診察を心がけています。「見た目ではよくわからないけれど、なんとなく目の様子がおかしい」そんな時でも、お気軽にご相談ください。
まとめ
犬のドライアイは、人と同じように目が乾くことで起こる病気です。ただし、犬は不快感を言葉で伝えることができないため、飼い主様がいち早く異変に気づくことが何より大切です。
目やにの増加、充血、目をしょぼつかせるなどのサインを見逃さず、早めに動物病院を受診することで、重症化を防ぐことができます。
「いつもと違うかも?」と感じたときは、どうぞお気軽にご相談ください。
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