2025.10.03 犬の食物アレルギーとは?症状・原因・フード選びの正しい知識
愛犬がかゆそうに身体を掻いていたり、皮膚が赤くなっていたり、あるいは下痢や嘔吐を繰り返していると、「フードが合っていないのでは?」と不安に感じたことはありませんか?
こうした症状が続くと、インターネットやSNS上で見かける「グレインフリー」や「グルテンフリー」といったキーワードに興味を持ち、フードを切り替えたくなるかもしれません。しかし、犬の食物アレルギーは非常に複雑で、自己判断だけで対応してしまうと、かえって症状が長引いたり悪化したりすることもあります。
そこで今回は、犬の食物アレルギーに関する正しい知識と、獣医師の視点から見たフードの選び方などについて解説します。

■目次
1.犬の食物アレルギーとは?
2.よくある症状と誤解されやすいサイン
3.グレインフリーやグルテンフリーフードの本当の位置づけ
4.自己判断でフードを変更するリスク
5.正しい診断と治療の流れ
6.まとめ
犬の食物アレルギーとは?
犬の食物アレルギーとは、特定の食材に含まれる成分に対して、体の免疫が過剰に反応してしまう状態のことを指します。特に、鶏肉や牛肉などの動物性タンパク質、小麦などの穀物類が原因になることが多く見られます。
なお、似たような症状を起こす「食物不耐症」という状態もありますが、これは免疫反応によるものではなく、特定の食べ物をうまく消化・吸収できないことで体調不良を引き起こすものです。たとえば、牛乳を飲むとお腹が緩くなるようなケースがこれに当たります。
当院でも「皮膚炎の原因が食物アレルギーかもしれない」とご相談に来られる飼い主様は少なくありません。まずはアレルギーとそれ以外の原因を正確に見分けることが重要です。
よくある症状と誤解されやすいサイン
犬の食物アレルギーでよく見られる症状には、以下のように皮膚症状と消化器症状の2つがあります。
<皮膚症状>
・かゆみ
・赤み
・脱毛
・繰り返す外耳炎
<消化器症状>
・下痢
・嘔吐
・食欲不振
これらの症状は、皮膚炎やストレスによる一時的な不調と誤解されやすく、その結果、受診が遅れてしまうことがあります。症状を悪化させないためにも、少しでも気になる様子が見られたら、早めに動物病院を受診することが大切です。
グレインフリーやグルテンフリーフードの本当の位置づけ
グレインフリーやグルテンフリーという言葉を聞いたことがある飼い主様も多いのではないでしょうか。これらは犬の食物アレルギーに効果的だとされ、注目されているフードの一種です。
◆グレインフリー
トウモロコシや小麦、大麦などの穀類を含まないフードのことを指します。
◆グルテンフリー
小麦や大麦などに含まれる「グルテン」というタンパク質を含まないフードを指します。
確かに、小麦や大麦に対してアレルギー反応を示す犬にとっては、これらのフードが有効となるケースもあります。しかし実際には、前述したように犬の食物アレルギーの主な原因は、鶏肉や牛肉などの動物性タンパク質や乳製品であることが多いと報告されています。
そのため、「グレインフリーだから安心」「グルテンフリーにすれば治る」というわけではありません。また、低アレルゲンフードと記載してある製品でも、使われている原材料によっては合わないこともあります。フードを選ぶ際には、「愛犬にとって何がアレルゲンなのか」をしっかり見極めたうえで、必要なケースにのみ適切に取り入れることが重要です。
自己判断でフードを変更するリスク
飼い主様が「今のフードが合っていないのでは?」と感じて、自己判断でグレインフリーやグルテンフリーのフードに切り替えることは、実は大きなリスクを伴います。
まず、誤ったフードを選んでしまうと、本当に必要な栄養素が不足する恐れがあります。また、食物アレルギーかどうかの診断も含め症状の原因が正しく特定されていないままでは、いくらフードを変えても改善しない場合が多く、その結果、犬も飼い主様も不安やストレスを抱えることになります。
さらに、「いろいろ試したけど治らない」という経験が積み重なることで、「うちの犬のアレルギーは治らない」と誤解してしまうことにもつながります。
そのため、アレルギーの対応は「試行錯誤」ではなく、「科学的な診断」に基づいて進めることが大切です。
正しい診断と治療の流れ
犬の食物アレルギーを診断するためには、以下のようなステップが必要です。
<診断の流れ>
①問診・身体検査:症状や生活環境を詳しく確認します。
②除去食試験:一定期間、疑わしいアレルゲンを含まない食事を与えます。
③再現試験:除去食で症状が改善した場合、再び疑わしい食材を与えて確定診断を行います。
また、除去食選びの参考にする目的や、食べられる食材を特定する目的でアレルギー検査を行う場合もあります。
<治療の基本方針>
治療では、アレルゲンを含まない療法食を継続的に与えることで症状をコントロールします。皮膚症状が強い場合には、必要に応じて薬物療法を併用することもあります。
当院では皮膚科の専門診療を行っており、科学的根拠に基づいた食事療法の提案や、生活環境の見直しを含めた総合的なサポートを行っております。飼い主様と一緒に取り組むことで、無理のない継続的な管理を実現しています。
まとめ
犬の食物アレルギーは、飼い主様が感じる以上に複雑で個体差も大きく、自己判断だけでは症状をうまくコントロールすることが難しい場合があります。しかし、正しい診断と適切な食事管理を行えば、アレルギーによる症状は十分にコントロール可能です。
また、グレインフリーやグルテンフリーのフードは、特定の症例に対しては有効ですが、すべての犬にとって必要というわけではありません。大切なのは、「必要な場合に正しく使う」という視点です。
当院では、飼い主様との丁寧なコミュニケーションを大切にしながら、犬にとって最適な診断と治療方針をご提案いたします。皮膚のトラブルやフードの選び方でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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茨城県下妻市・筑西市・八千代町を中心に診察を行う 稲川動物病院
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