2025.10.03 犬や猫の口が臭うのはなぜ?考えられる原因と対策を獣医師が解説
最近、愛犬や愛猫の「口が臭う気がする…」と感じたことはありませんか?毎日一緒に過ごしているからこそ、ふとした瞬間にお口の臭いが気になるものです。
実は、犬や猫の口臭は単なる食べかすの臭いだけではなく、体調不良のサインである可能性があります。特に、お口のトラブルだけでなく、全身の病気が関係していることもあるため、見過ごさずに適切な処置を行うことが大切です。
そこで今回は、犬や猫の口臭の主な原因とご家庭でできる対策、さらに動物病院で行う専門的なケアなどについて解説します。

■目次
1.犬や猫の口臭の主な原因とは?
2.こんな症状は見逃さないで!飼い主様ができるチェックポイント
3.ご家庭でできる口臭ケアの工夫
4.動物病院で行う専門的なケア
5.早期に受診が必要なサイン
6.まとめ|口臭は放っておかずに相談を
犬や猫の口臭の主な原因とは?
口臭の背景にはさまざまな理由がありますが、代表的な原因は以下が挙げられます。
<歯周病>
犬や猫に最も多く見られる口臭の原因が「歯周病」です。歯の表面に溜まった歯垢(しこう)が、やがて硬化して歯石となり、そこに細菌が繁殖することで歯ぐきに炎症が起こります。進行すると歯を支えている骨が溶け、歯がぐらついたり抜けたりすることもあります。腐ったような臭いがするのが特徴です。
歯周病は見た目では気づきにくく、痛みを感じても犬や猫は我慢してしまうことがあるため、飼い主様が早めに気づいてあげることが大切です。
<歯石>
歯垢を放置すると、数日で石のように固まって「歯石」となります。この歯石には多数の細菌が付着し、臭いの原因となるガスを発生させます。一度歯石がついてしまうと、自然には取れないため、動物病院での専用的な処置が必要です。無麻酔での歯石除去は効果・安全性ともに低いため当院では行っていません。
特に歯の裏側や奥歯は、歯石が溜まりやすいため日常的なケアが欠かせません。
<歯肉炎・口内炎>
歯ぐきが赤く腫れる「歯肉炎」や、口の粘膜に炎症が生じる「口内炎」も口臭の原因になります。歯肉炎は歯周病の初期段階であり、進行すると強い口臭が出るようになります。口内炎は特に猫でよく見られ、免疫異常などが関与して慢性化することもあります。
口の中がしみるため、ごはんを食べづらそうにしたり、食事の途中でやめてしまったりする様子が見られることがあります。
<口の中の傷・できもの>
何らかの原因で口の中に傷やただれが生じた場合や、腫瘍ができている場合にも口臭が強くなることがあります。痛みや違和感からご飯を食べなくなったり、よだれが増えることがあります。
<その他の病気>
口臭はお口の中の問題だけではなく、全身の病気が関係している場合もあります。特に以下のような病気が原因として考えられます。
・腎臓病:アンモニアのような独特の臭いが口から感じられます。
・肝臓病:代謝の異常により、口臭が強くなることがあります。
・糖尿病:甘酸っぱいような臭いがすることがあり、注意が必要です。
こうした全身の病気が原因の場合、命に関わる可能性もあるため、すぐに動物病院で相談するようにしましょう。
こんな症状は見逃さないで!飼い主様ができるチェックポイント
口臭とともに以下のようなサインが見られる場合は、単なる臭いの問題ではなく、病気が進行している可能性があります。
・よだれが増えている
・ごはんを食べづらそうにしている
・片側だけで噛んでいるように見える
・顔を触られるのを嫌がる
・口を前足でこすっている
・歯ぐきが赤く腫れている
・口の中から出血している
・口臭が以前と明らかに変わった
特に、「食欲が落ちている」「体重が減ってきた」などの全身的な変化がある場合には、内臓疾患や重度の炎症が関係している可能性が高まります。そのため、自己判断で様子を見るのではなく、早めの受診を心がけましょう。
ご家庭でできる口臭ケアの工夫
日頃から以下のようなケアを習慣にすることで、口臭の予防や病気の早期発見につながります。無理なく、やさしく、少しずつ始めていきましょう。
<歯みがきを習慣づける>
歯みがきは最も基本的で効果的な口臭予防の方法です。犬や猫用の歯ブラシや歯みがきジェルを使い、できれば毎日、難しい場合は週に数回でもケアすることが重要です。
<デンタルガムや口腔ケアおやつの活用>
噛むことで歯垢を取り除くデンタルガムや、口腔内を清潔に保つ成分が含まれたおやつも有効です。歯みがきが苦手な犬や猫でも、取り入れやすいケア方法です。
<やさしいケアを心がける>
口の中はとてもデリケートな部分です。強引なケアはかえってストレスになったり、傷つけてしまったりする恐れがあります。そのため、無理をせず、飼い主様も犬や猫もリラックスした状態で行うようにしましょう。
◆歯みがきのやり方
はじめての歯みがきでは、いきなり歯ブラシを使うのではなく、以下のように段階的に慣らしていくことが大切です。ご褒美を使いながら行うと慣れやすいでしょう。
①口のまわりを指でやさしく触る練習をします
②指にガーゼを巻いて前歯に軽く触れてみます
③慣れてきたら、犬や猫用の歯ブラシで顔や口周りを触り、そのあと歯に触れる練習をします
④ガーゼや歯ブラシで歯の表面をやさしく磨きます
歯みがきは毎日少しずつ繰り返すことで、嫌がらずにケアできるようになる犬や猫も多く見られます。
動物病院で行う専門的なケア
ご家庭でのケアだけではどうしても限界があります。特に、すでに歯石がついてしまっている場合や、強い口臭がある場合には、動物病院で以下のような専門的な処置が必要です。
<スケーリング(歯石除去)>
スケーリングとは、専用の器具を使って歯石を取り除く処置です。通常、全身麻酔下で行うため、犬や猫にとって痛みや恐怖が少なく、誤嚥などのリスクも防ぐことができます。
<事前検査の重要性>
麻酔を安全に行うためには、事前に血液検査や胸部のレントゲン検査などを実施します。当院では持病がある犬や猫でも、状態に応じて適切な麻酔管理を徹底して行っています。
<歯周病や口内炎の治療>
状態に応じて、抗生剤や消炎剤の投与、必要であれば抜歯などの処置を行う場合もあります。放置してしまうと症状が悪化しやすいため、早期の治療が大切です。
当院では、愛犬や愛猫に配慮した、ストレスの少ない診療を心がけております。お口のトラブルが気になる場合は、お気軽にご相談ください。
早期に受診が必要なサイン
以下のような状態が見られた場合は、できるだけ早めに動物病院を受診してください。
・急に口臭が強くなった
・ごはんの食べ方が変わった、または食べたがらない
・よだれが増えている、または口の動きがいつもと違う
これらの変化の背景には、歯周病などのお口のトラブルだけでなく、重篤な全身性の病気が隠れていることもあります。「そのうち治るだろう」と様子を見ず、できるだけ早く受診することが犬や猫の健康を守る第一歩です。
まとめ|口臭は放っておかずに相談を
犬や猫の口臭は、見逃してはいけない健康のサインです。日頃のケアで予防しながら、定期的な歯科チェックや健康診断を受けることで、病気の早期発見につながります。
当院では、飼い主様との対話を大切にしながら、愛犬や愛猫にとって最適なケアを提案しています。「最近お口の臭いが気になる」と感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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茨城県下妻市・筑西市・八千代町を中心に診察を行う 稲川動物病院
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