2025.04.07 犬のてんかんについて|MRI検査では分からないって本当?
愛犬が突然発作を起こしたら、飼い主様はとても驚くことでしょう。発作の原因のひとつに「てんかん」がありますが、この病気はMRI検査をしても異常が見られないことが多いのが特徴です。そのため、診断には慎重な経過観察が必要になります。特に特発性てんかんの場合、脳の構造に問題がなくても発作を繰り返すことがあります。
今回は犬のてんかんについて、特徴や発作時の対応、治療方法などを詳しく解説します。
■目次
1.犬の神経疾患
2.犬のてんかんとは?
3.発作の種類と症状
4.発作時の対応方法
5.診断方法・治療方法
6.よくある質問(Q&A)
7.まとめ
犬の神経疾患
犬の神経疾患には、以下のようにさまざまな種類があります。
<発作性疾患(てんかん)>
突然の発作がみられる病気です。多くの場合、発作は時間をおいて繰り返し生じます。
<脊髄・椎間板疾患(椎間板ヘルニア、変性性脊髄症、線維軟骨塞栓症)>
歩行困難や麻痺を引き起こすことがあります。
<炎症性疾患(髄膜炎、脳炎、神経根炎)>
発熱や首の痛み、歩き方の異常などが見られることがあります。症状は病気の種類や進行具合によって異なりますが、いずれも早期の診断と治療が重要です。
<腫瘍性疾患(脳腫瘍、脊髄腫瘍)>
脳腫瘍では発作や意識障害が見られることがあり、脊髄腫瘍では歩行異常や麻痺などの症状が現れることがあります。
<先天性疾患(水頭症、シャルコー・マリー・トゥース病(特定犬種))>
特定の犬種で遺伝的に発症しやすい病気です。
この中でも、特に発症率が高いのが「てんかん」です。発作を繰り返す場合は、てんかんの可能性があるため、適切な対応が必要です。
犬のてんかんとは?
てんかんとは、脳の神経細胞が異常な電気信号を発することで発作を繰り返す病気です。犬のてんかんは、原因不明の特発性てんかんと、腫瘍や脳炎など目に見える異常がある構造的な病気によるてんかんに分類されます。
<特発性てんかん>
MRI検査では異常が確認されず、遺伝的要因が関与していると考えられています。1~5歳の若齢の犬で発症しやすいのが特徴です。
<構造的な病気によるてんかん>
脳腫瘍や炎症性疾患などの病気が原因である可能性が高いため、早めの診察が必要です。特に高齢の犬で発症することが多いです。
また、「発作」と「てんかん」は混同されがちですが、発作とは一時的な症状のことを指し、てんかんとは発作を繰り返す慢性的な病気のことを指します。1回の発作だけではてんかんとは診断されませんが、半年以内に2回以上の発作が起こった場合は、治療の必要性が高まります。
発作の種類と症状
てんかん発作には、「部分発作」と「全般発作」の2種類があります。
<部分発作>
脳の一部で異常な電気信号が発生する発作です。体の一部だけが震えたり、意識がある状態で異常な行動をとったりすることがあります。
<全般発作>
脳全体に異常が広がる発作で、突然意識を失い、全身の痙攣または体が突っ張る強直性の発作が起こるのが特徴です。
特に部分発作は軽度で気づかれにくいため、発作の様子を動画に記録し、診察時に獣医師に見せることが診断の助けになります。
<症状>
てんかんの一般的な症状として、以下のようなものがあります。
・痙攣(全身または部分的)
・意識消失(全般発作の場合)
・よだれ(発作時に口周りが泡立つことがある)
発作時の対応方法
愛犬が発作を起こした場合、以下の対応を心がけましょう。
①落ち着いて時間を計る(発作が5分以上続く場合はすぐに動物病院を受診する)
②周囲の危険なものを取り除く(家具の角などにぶつからないようにする)
③発作の様子を動画に記録する(診察時に役立つ)
<してはいけないこと>
・無理に口を開けようとする(舌を噛むことはほとんどない)
・揺さぶる、刺激を与える
・24時間以内に発作が繰り返された場合に様子を見続ける]
診断方法・治療方法
てんかんの診断には、問診(発作回数や状態の確認)、神経学的検査(発作以外の神経症状の確認)、血液検査、MRI検査、脳脊髄液検査などが行われます。確定診断には脳波検査が必要ですが、検査可能な施設が限られているため、実際には行われないことがほとんどです。
また、特発性てんかんはMRI検査で異常が見られないため、発作の経過や頻度が診断の重要な判断材料となります。
主な治療方法は抗てんかん薬の投与です。薬によって発作の回数を抑えることができ、適切に管理すれば日常生活を普通に送ることも可能です。また、特発性てんかんの場合は、基本的に薬を生涯にわたって続ける必要があります。
治療費は月に5,000~20,000円程度が目安ですが、薬の種類や犬の体重によって異なります。
よくある質問(Q&A)
Q:発作が起きた時、犬に触れても大丈夫ですか?
A:触らない方が安全です。意識がない状態で突然動くことがあり、飼い主様がケガをする可能性があります。
Q:発作が起きる前に何か前兆はありますか?
A:落ち着きがなくなる、吠える、歩き回るなどの行動が見られることがあります。
Q:発作後、留守番させても大丈夫ですか?
A:すぐに次の発作が起こる可能性があるため、しばらくは様子を見守りましょう。
Q:発作の頻度が増えてきた気がします。薬の量を増やした方がいいですか?
A:獣医師に相談せずに薬の量を変えるのは危険です。まずは診察を受けましょう。
Q:てんかんは遺伝しますか?
A:遺伝が関係していると考えられています。特にボーダーコリーやビーグルなどの犬種では発症リスクが高いとされています。
まとめ
犬のてんかんはMRI検査で異常が見られないことも多く、特に特発性てんかんでは慎重な経過観察が必要です。若齢で発症することが多いですが、高齢で初めて発作を起こした場合は、脳腫瘍などの病気の可能性も考えられるため、早めの診察をおすすめします。
愛犬の発作を正しく理解し、適切に対応できるように準備しておきましょう。
茨城県下妻市・筑西市・八千代町を中心に診察を行う 稲川動物病院
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